38.金融工学、こんなに面白い 野口悠紀雄
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/09/20
- メディア: 新書
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最初に述べられているが、「金融工学」を学ぶことによってお金持ちになれるというわけではない。
p.38
金融工学のエキスパートになれば、有名にはなれるだろう。しかし、金儲けはできないのだ。
p.39
金融工学の基礎的な方法論を学ぶことによって、無駄な損失を回避することができる。合理的な投資というのは、そのようなものである。
(中略)
さらに、「だまされない」ためにも、金融工学の概要を知っておくことが必要だろう。―いかさま金融商品をつかまされたり、つまらないサービスに法外な料金を要求されることもあるようだ。―専門家でなくとも、金融工学の基礎知識を持つ必要がある。
残念はあるが金持ちが約束されるわけじゃない。それでもより無駄のない投資が利益に結びつきやすいのは間違いない。ただ、「確実」に儲かるわけではないということ。
そういうことで、今まで金融工学を学んだことがない人にでもその概要を理解してもらおうというのがこの本の趣旨。確かに結構分かりやすい。リスク分散の話とかは相変わらず説明がうまいなーと思った。とにかく、金融工学の主題である「リスク」をどのようにしてマネージするかという観点から一貫して説明されていて、「先物取引とかオプションっていうものの存在背景にはこういう理由があったのか!」と納得できる。
とはいえ、もちろん問題がゼロなわけではない。学術書で問題ゼロな本なんてそもそも存在しにくい。
- 厳密に問題を取り扱っている名著<難しい:-(
- 問題を簡略化して分かりやすい<そんなテキトーな説明じゃだめだろ!or逆に分かりにくいよ!
- 平易だけど細かい部分もきっちり<テキスト厚すぎ!
みたいな。
この本は2番目。少なくとも僕には半端に感じた。相関係数や共分散の導出(というか計算法)は言葉で説明すると非常にわかりづらい。
p.78
「共分散」とは、各々の状態における期待値からの差を掛け合わせたものの期待値である。それを標準偏差の積で割ったものが相関係数だ。
うーん、改めて文章にされるとわからん。このへんが一般向けで数式を使わない(使えない)本の厳しいところ。数式で書かれても分からんだろうけど、日本語にされてもやっぱり分からん。でも確かに説明するとそうなるんですけどね。。。ベータ値の計算もそう。もちろん、この本を教科書として読めばきちんとノートとかで概念を図示しながら読みそうなんだろうけどなぁ。
また、経済学あるいは経営学を学んだことがない人とかにはちょっと不親切な部分もある。p.119でいきなり「キャッシュ・フロー」なる単語が出てくる。説明もなしに。
それでも、金融工学にちょっとでも興味があるなら損はしないんじゃないかと。