048.99%の誘拐 岡嶋二人

99%の誘拐 (講談社文庫)

99%の誘拐 (講談社文庫)

 岡島二人の作品は『クラインの壺』、『チョコレートゲーム』についてで三冊目。『クラインの壺』では衝撃を受けたが、2冊目に読んだ『チョコレートゲーム』は、期待が大きかったせいか個人的には、あまり。。。な感想を持った覚えがある。

 結果からいうと、本作『99%の誘拐』は読んでよかった。ストーリーとしては序半の誘拐事件につづき、20年後の新たな誘拐事件に話が移っていく。誘拐事件が多いのは、岡島二人の特徴。話の展開としては、早いうちから犯人が明らかになるので誘拐の過程を(読者として)楽しむタイプ。
 ジャンルがそもそも違いそうな気もするので『クラインの壺』と対比させることに対して意味はないが、両作ともに結構技術的なトリックを使ったシナリオになっている。しかし、その内容・扱い方は大きく異なる。『クラインの壺』は、技術が進歩してきた現在でさえ実現が難しいものが主題となっている。それに対して、本作では、当時としては結構先進的な内容となっていたんだろうが(本当に実現できるかどうかは別として)かなり現実味のある手段を用いている。そのため、本作では、犯人は最後まで細い綱の上を渡っているようなきわどい立場にいて、読んでいるこちらも緊張感を強いられるような展開だった(逆に『クラインの壺』では最後の最後で驚くべき、ある種ホラーとも言える結末となる。これは『クラインの壺』の設定だからこそなしえたモノだ)。

 そのような場面でさえつい犯人の見方をしてしまうのは、事情を知った上で、犯人が単純に悪いと言い切れないからだが、そのあたりを言い過ぎると面白くないので読んでからのお楽しみ。


 また、この物語の一つの面白いところが、犯人の明確な動機がよく分からないところだ。もちろん、本編を読んでいればそれなりの想像はつく。犯人が第一人称の部分も所々ある。それでも自分がどのような思いを胸にして犯行に及んだのか?その金を何に使うのか?誰に対する復讐なのか?というところは最後まで明らかにならない。

クラインの壺 (新潮文庫)

クラインの壺 (新潮文庫)