翻訳の差と質

 最近、サン=テグジュペリ星の王子さま」の翻訳をいろいろ見かける。日本語版、英語版を含めてそれこそ5冊は超えると思う。最近注目している光文社の新訳文庫からも野崎歓訳として「ちいさな王子」が出版されている。どうしてこんなにいろんな作品が出てきているかというと、2005年の一月に日本語版の著作権が切れたから。今まで親しまれてきたのは内藤 濯(あろう)氏の「星の王子さま」なのだけど、実はこのタイトルはかなり意訳されたもので、本当は「小さな王子」という意味でしかなかったらしい。以下のサイトでもそのことが指摘されている。「翻訳」の限界

「星の」は暴挙といってよい歪曲であるし、「王子」も誤訳であると私は思う。しかし、「内藤『王子さま』」(「星の王子さま」)の功績は大きく、その地歩は永久に揺らぐものではない。いま望まれるのは、「内藤『王子さま』」の明らかな誤解を指摘しつつ、新しい観点からの「試訳」をできるだけ多くの人が公開することである

 僕は内藤訳を読んだことがないので批評できる立場にはないが、この訳はなかなか子ども向けで、特に最後はお涙頂戴という雰囲気だとか。それに対し、僕の購入した光文社の野崎版「ちいさな王子」ではそういう雰囲気を抑えた淡々とした感じらしい。世間的な評価はどうか知らないけど自分はそんな淡々とした文体の方が好みなのでかなり期待している。